SPAC(スパック:Special Purpose Acquisition Companies:特別目的買収会社)は、新型コロナウイルス危機をきっかけに魅力的な投資媒体として急拡大している。2020 年の SPAC 上場数は 2019 年と比較して 2 倍となった。
SPAC は、従来の IPO 方式を通じて資本調達しながら未公開企業の買収を目的とする。
SPAC ブームの過熱
著名なヘッジファンドや投資信託などの機関投資家は、運営スポンサーとして長年 SPAC 投資に携わり “founders shares”(創設者株)として SPAC 株の 20% を受け取る権利を有する。
テクノロジー関連企業の素早い上場を目的とする戦略的 SPAC は VC(ベンチャーキャピタル)と似たような役割を果たしている。
SPAC の流れ
SPAC 取引は、その迅速さと戦略的パートナーシップ構成より、一部企業にとっては通常の IPO と比較して非常に魅力的である。
長い年月を要する IPO とは異なり、企業買収と資金調達、株式公開に至る一連の買収計画は 24 か月以内に完了。
SPAC 上場で調達した資本は、株主の買収承認が得られる迄の間は信託口座に保管されるが、買収に反対する投資家は株式償還が認められている。
更に、運営スポンサーは PIPE(パイプ:Private Investment in Public Equity)取引を通じて、機関投資家より私募増資を調達する事もできる。この過程を “De-SPACing” プロセスと称する。
ウォーレン・バフェット氏は、株式や証券を割引価格で購入できる PIPE 取引に深い関心を抱いている。
近日のウォール街では、投資銀行がプレイスメント・エージェントとして PIPE 取引に関与。
SPAC 上場の成功例
英実業家リチャード・ブランソン氏の宇宙旅行会社「ヴァージン・ギャラクティック・ホールディングス」は、2019年に SPAC 上場し、同年内に 146% の収益を上げた。
米ヘッジファンドマネージャーのビル・アックマン氏が率いる「パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメント」は、2020 年に SPAC 上場し、40 億ドルを調達。これまでの SPAC 上場では最大規模である。
テクノロジーに特化した世界最大規模 VC(ベンチャーキャピタル)であるソフトバンクでは、SPAC 上場を目的に多様なセクターに渡る小規模民間企業に 1 億ドル以上の出資を行っている。
参考文献:
- The fast track IPO – Success factors for taking firms public with SPACs – papers.ssrn.com
- EMERGING TRENDS IN THE SPECIAL PURPOSE ACQUISITION COMPANY MARKET: IMPLICATIONS OF FRONT-END IPO UNDERPRICING – repository.tcu.edu
- How special purpose acquisition companies (SPACs) work – pwc.com
- SPAC Research – spacresearch.com
- A SPAC is a high-risk but potentially profitable way to get in on the ground floor of a new stock — here’s everything investors need to know – businessinsider.com
- Almost everything you need to know about SPACs – techcrunch.com
- What Is A SPAC? – cbinsights.com
- Special Purpose Acquisition Company (SPAC) – investopedia.com